高校時代はバンド好きで、聞きたいラジオ番組はほとんど関東圏の局。
関東に友達はおらず涙を飲む日々。
しかし、高校生わたしは諦めなかった。
なんとしてもあのバンドの新曲を今日聴くんだ!
その一心でおもむろにクローゼットを開く。
目的は、クリーニング屋さんで貰える針金のハンガー。
彼の華奢な肢体をペンチで解きほぐす。より長く、より真っ直ぐに。
苦心の末出来上がった細く頼りない命綱をステレオから伸びたアンテナの先に固定する。
固定するのにテープ等は役に立たない。あいつらにこの試練を乗り越える根性は無い。信じられるのは我が右手のみ。
こうして出来上がった長いアンテナを窓の外に突き出し、探す、探す、目には見えないけどどこかには流れているはずの音楽を。
左手はチューニングのツマミを1/100単位で動かす。
ノイズ、民謡、交通情報、演歌、悩み相談、アイドルの笑い声...
番組終了時間は刻一刻と迫りもはやここまでか、そう諦めかけた瞬間、
一瞬、彼の声が聞こえた気がした。
また直ぐに雑音にかき消されたが、私の心はしあわせに満たされていた。
冬のある夜のこと。
ラジオの物語ははあちら側だけではない。こちら側にもある。
翌日まんまと風邪をひいたわたしもきっとある意味ラジオスターだったのだろう。
...そう思えないこともなくはないかもしれない可能性は捨てきれなくもない。
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凍てつく冬空の下、
見えない電波を探して、
聞こえない声を聴くために傾けた、その情熱☆
この話を聞いたら、
ラジオスターはきっと、泣いて喜ぶことでしょう☆
それにしても、そうまでして聴きたかったバンドと
その新曲って何でしょう?
もし、B'z の "GOLD" だったら、
素晴らしい、奇跡的なつながりですよね☆
「ひたすら最高の瞬間を想え!」